私たちは日常的にニュースや情報に触れる中で、無意識のうちに偏った見方や誤解を抱いてしまうことがあります。
そんな私たちの思い込みを解きほぐし、事実に基づいた視点で世界を理解することの大切さを教えてくれるのが、ハンス・ロスリング著の「FACTFULNESS」です。
この本は、私たちが抱えがちな10種類の思い込みや本能を挙げ、それらを乗り越える方法を紹介しています。
以下では、その中から特に重要なポイントを3つの考察に分けてご紹介します。
考察① 思い込みがもたらす世界の誤解
「世界は悪くなっている」というイメージは、現実とは異なる場合が多いことに気づく必要があります。
人間には、ネガティブな情報に注目しやすい「ネガティブ本能」があり、暗いニュースや問題ばかりを目にしてしまう傾向があります。
たとえば、多くの人は「極度の貧困が増加している」と考えがちですが、実際にはこの20年間で貧困にある人の割合は半減しています。
さらに、世界の平均寿命は70歳に達し、医療技術や予防接種の普及により健康状況も改善されています。
しかし、こうしたポジティブな進歩は、ネガティブなニュースに埋もれがちです。
このように、現実を見るためには事実に基づく視点を持ち、思い込みから解放されることが重要です。
考察② 「分断の思い込み」が生む誤解
「世界は二極化している」という考え方もまた、事実を正確に反映していない場合が多いです。
多くの人が「富裕層と貧困層」「先進国と途上国」といった二分的な見方をしがちですが、実際には中間層の存在が大きな割合を占めています。
たとえば、200年前の世界では、85%以上の人々が極貧層(レベル1)に属していました。
しかし現在では、世界人口の大部分がレベル2やレベル3に位置しており、極度の貧困層は少数派となっています。
このように、世界を単純に分けて捉えるのではなく、多様性を理解する視点が求められます。
大半の人々がどの位置にいるのかを正確に把握することで、より現実に即した世界観を得ることができます。
考察③ 恐怖が判断を曇らせるリスク
恐怖心は、人間が正確な判断を下すのを妨げる大きな要因となります。
自然災害や事故などのニュースを目にするたび、私たちはそれが頻繁に起きているように感じてしまいます。
しかし、実際には自然災害による死亡率は過去100年で大幅に減少し、飛行機事故も極めて低い発生率を示しています。
たとえば、2016年には4000万便以上の飛行機が安全に運行され、そのうち死亡事故が発生したのはわずか10便でした。
それにもかかわらず、恐怖本能によって危険性を過大評価してしまうのは、人間が恐ろしいものに目を向けやすい性質を持つからです。
この本能を抑えるためには、感情に流されず、リスクを冷静に評価する姿勢が必要です。
まとめ
「FACTFULNESS」は、私たちが無意識に抱く10種類の思い込みや本能を乗り越え、事実に基づいて世界を理解するための方法を示しています。
ネガティブな情報に支配されることなく、統計やデータを通じて現実を正しく捉える力を身につけることが求められます。
特に、「世界は悪化している」「二極化している」といった思い込みを改め、冷静で多面的な視点を持つことが重要です。
この本を通じて、偏見や先入観から解放され、より正確な判断を下すためのヒントを得られるでしょう。
事実に基づいた視点を育むことで、未来への希望を持つことができるはずです。