本「安倍晋三 回顧録」の考察まとめ

『安倍晋三 回顧録』は、長期政権を築いた安倍晋三元首相の回想録として、大きな話題を呼んでいます。

本書では、政策の背景や首相としての思考、さらには彼の人間性までもが赤裸々に語られています。

以下では、本書の特徴や魅力を3つの観点から掘り下げていきます。

目次

考察① 本書のフェアな内容と安倍氏の素直さ

『安倍晋三 回顧録』は、単なる称賛本ではなく、非常にフェアな内容となっています。
多くの政治家の回想録では、批判をかわすための弁解や都合の良い解釈が多い中、本書は素直さが特徴的です。

例えば、アベノマスクや「星野源さんとの動画」への批判について、安倍氏は「悪評も評判のうち」と述べています。
批判を受け止めつつ、自分なりの考えを率直に語る姿勢には、読者に対する誠実さが感じられます。
また、森友問題や桜を見る会といったデリケートな話題についても避けずに触れています。

さらに、安倍氏自身の育ちの良さが、本書全体に流れる素直な語り口調に表れています。
自分の主観に基づいて全てを語っているため、嘘やごまかしを感じさせない構成が本書の魅力となっています。

考察② 首相としての判断と責任感

本書では、長期政権を担った首相としての判断や責任感が随所に感じられます。
政策決定における苦悩や判断基準が語られており、安倍氏がどのように日本の舵取りをしていたかがわかります。

特に印象的なのは、生前退位に関するエピソードです。
安倍氏は、明治以降続いてきた「一世一元の制」を変更するための特例法を作る際、長州出身の伊藤博文が定めた制度を同じ長州出身の自分の時代に変えるのか、と問われたことを述懐しています。
この問いに対し、時代に即した柔軟な判断を重視した安倍氏の姿勢が示されています。

また、民主党政権から自民党政権へと移行した際の選挙戦略についても語られています。
「勝てるタイミングで解散する」という安倍氏の政治的センスが、このエピソードに垣間見えます。

考察③ 人間観察と「ネアカ」な性格

本書には、安倍氏の人間観察力や「ネアカ」な性格が色濃く反映されています。
特に、政治家や官僚、外国首脳に対する評価が率直かつ人間味にあふれています。

例えば、セクハラ問題で辞任した財務省の福田事務次官について、安倍氏は「セクハラはダメだが、彼は面白い人だった」と述べています。
人物評価において良い面を拾い上げる視点が、安倍氏のポジティブな性格をよく表しています。
また、ドゥテルテやトランプといった「癖のある首脳」に対しても、同情的で人間味のある見方をしている点が印象的です。

一方で、野党や左派勢力に対しては厳しい視線が向けられています。
彼らが「何かを隠している」と感じる点に対する不満が随所に現れています。
このように、安倍氏の好き嫌いや価値観が本書の語り口に反映されていることも、本書の大きな特徴と言えるでしょう。

まとめ

『安倍晋三 回顧録』は、安倍氏の素直な語り口や長期政権を担った首相としての判断、さらには人間的な一面を深く知ることができる一冊です。
称賛や批判のどちらかに偏ることなく、政策やエピソードがフェアに描かれています。

安倍氏の「ネアカ」な性格や人間観察力、また自分の育ちや価値観を隠すことなく語る姿勢が、本書をユニークな回顧録にしています。

政治に関心がある人だけでなく、安倍氏という人物そのものに興味がある方にとっても、大変読み応えのある内容です。

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